踊る1401便

星間旅行は今日も続く

コワイ話し

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世の中には様々なコワイ話が現存する。
 
怪談、奇譚、事故、動物、トラブル …
人が「コワイ」と感じるスイッチは魑魅魍魎の話に限らない。
 
尚、私には一切霊感が無い。
親指にクッキリ仏眼があり、掌には神秘十字線と直感線があり、小指は薬指の第一関節よりも長く、手を組むと左手が上になるが、霊感は断じて無い。
 
しかし、父の実家に住む従兄に言わせれば「私に霊感が無いのがおかしい位」らしい。
 
一この従兄、いわゆる「見える人」なのだ。
 
本当は見えているけど無意識的に目を逸らしている。
一度「何か」の体験をすれば意識に入り、波長のチューニングが合えば間違いなく見える様になる。と。
 
そんなのはご勘弁もご勘弁。絶対に嫌だ。
何が何でも見てやらない気概である。
 
幼少期、怖いのは嫌なのでそんな体験が起きない様に願うばかりであった。
 
だがその願いも虚しく、私はある体験をする。
 
 
 
私の父は田舎育ちで、実家は山の中にある。
裏の裏の裏くらいまでが祖父所有の山。
 
幼少の私は、灯りも無い夜の山が怖く、あまり行きたいとは思えなかった。
 
 
ある日、両親が不在になる事情から父の実家に泊まりで預けられることになった。
心底嫌だったが、ゲームで遊んでくれる従兄を唯一の楽しみに預けられる他無い。
 
 
日中は従兄とゲームなどをして時間が過ぎていった。
しかし陽も落ちた頃、従兄が山へランニングへ行くと言う。
一緒に行こう、とも。
 
私は留守を希望したが、祖父にも行ってこいと強く押され、渋々出るハメになった。
 
もしかしたら何か出るかもよー笑
 
などと子供をからかう大人気無さにウンザリしたが、正直私は気が気で無い。
何か嫌な事が起きる、そう予感していたのだ。
 
 
田舎の夜道は比喩では無く真っ暗だ。
当然、電灯は一本も立ってはいない。
数メートル先も見えない状況で、唯一の灯りと言える懐中電灯は心許なかった。
 
機械的な音は無く、虫やフクロウの鳴き声だけが響いている。
田舎の夜に慣れていない私には、それすらも不気味そのものに感じられた。
 
 
ランニングに出てから少し経ったとき。
ふと気が付くと、従兄が何かを呟いている。
 
コワイ コワイ コワイ ……
 
私にはその言葉の意味が理解できなかった。
いや、理解してはいけないと思った。
 
その為、従兄へ言葉の意味を尋ねることは出来ない。
聞いた瞬間から「体験」が明確化し、世界が一変してしまう気さえしていたからだ。
 
しかし従兄は何度も口にする。
 
コワイ コワイ コワイ …
 
もしかして「何か」が居るのか。
 
居る、居ない、と二択から考えている時点で寒気が止まらなくなった。
何故その発想になるのか。
 
この直感が訴えるのもは、一体何なのか。
 
 
コワイ コワイ コワイ…
 
従兄が呟くその言葉が脳内でグルグルと回り、私は「理解出来ないこと」の恐ろしさに震えていた。
かえって「何か」が見えた方が安心するのではないか。
目視した方が防衛策も取れるのでは無いだろうか。
 
そんな事を考えていた。
 
無力な私に出来る事は、後ろを振り返らず、足元を静かに見て、従兄から離されない様に精一杯走る。
たったこれだけだった。
 
私にとって、無力とは不安そのものだった。
 
 
しかし、特に何事も無く祖父が待つ家に着くと、従兄は「お疲れさん」と声を掛けてきた。
道中、従兄が繰り返し口にした言葉の答えを知りたくて恐る恐る尋ねる。
 
すると従兄は薄く笑い
 
「あー…いや、何も無いよ」と返す。
 
含みのある言い回し。従兄は「何か」を隠している。そう感じた。
「見えない私」に悟られまいとしているのではないか。
 
だが「何も無い」と言われてしまえばそれ以上は聞きようが無い。
正直、怖い話が飛び出すのも嫌なので追求はしなかった。
 
世の中には知らなきゃ良かった話もあるだろう。
そう、自分を納得させた。
 
 
 
後日、私は父と何の気無しに従兄が繰り返し口にしていた言葉の話しをした。
 
すると父から衝撃の解説があったのだ。
 
 
「あーコワイってさ、疲れた って事だよ。方言ね、方言」
 
もうね、あの従兄マジでぶっ飛ばしてやろうと思った。